アルカナシカ

昨年、知人が田口ランディさんに会ったと話していたので興味をもち、これまでに2冊のエッセイ本を読んでいる。

テーマの切り口や考え方がすごく素直で裏表のない内容、読みやすい文章にとても好感をもったのでした。

そして、図書館のエッセイコーナーにランディさんの新刊(と言っても昨年6月に発行されている)を発見したので、早速借りてみた。
ちょっと今までの(2冊しか読んでないけど)本とは違う、いや趣向は一緒なんだろうけど、かなり高度な内容の本だった・・・!



  「アルカナシカ〜人はなぜ見えないものを見るのか」
     田口ランディ著 角川学芸出版 1500円+税

 
 

この本の内容を説明するのは、私にとって非常に難しい。
情報がたくさんありすぎる。
その情報も、かなり哲学的で不思議な世界。
さらっと読むだけではなかなか頭に入ってきにくい内容なのだ。
そして、その情報は思いつきもしないところで少しずつ、つながっている。
これは田口ランディさんの、ものすごい思考回路、文才のなせるわざである。
 
(概要を自分の頭で理解できた範囲で書き残しておくと・・・) 

著者は、シャーマンや超能力者、UFOを見た人など「もう一つの世界」を体感している人たちと数多く接し、著書も“目に見えない世界”を扱ったものが多い。

その人たちとの出会いもシンクロニシティで不思議とつながっていくのに、当の著者本人には幻覚体験や非現実的なものを体験することが全くなく、どんな世界なのか体験してみたいと強く願っていた。 

その願いを実現するべく、メキシコのウアウトラへ行き、マジックマッシュルームを食べて不思議な神秘と神聖な体験をする。
それも鮮明で冷静な意識下で。

この変性意識体験というトランスパーソナルな体験をどう扱うか、体験と認識とのつながり、心的現実とは思えないリアルな体験を他者とどう共有するか、どう説明づけるのか・・・。
カントって?が発端となり、人はなぜUFOを見るのか・・・に話は展開していく。
 
カントによるスウェーデンボルグへの見解と「純粋理性批判〜人間の認知の限界〜(霊界、神に関することは哲学の領域では扱わない、人間が理解できる理性の限界)」、ルター、浄土宗、カトリックユング、UFOに遭遇した人の体験話、ユリ・ゲラーとの出会い、苫米地英人さんの“洗脳”の話、そして「冥王星の発見者」として知られるパーシヴァル・ローエル(実際に発見したのは研究を受け継いだ弟子のトンボー博士)、パーシヴァル(偉大なる愚か者)、ローエルが日本での旅行地に選んだ能登半島(UFOの発見)、タロットカードの愚者(ゼロ)、3月11日の大震災を占星術的視点からみたシンボリズムで交わされた星の偶然性。
 
もう後半何ページかの疾走感はすごいものがある。
物質と精神、見えない世界とのつながりが、推理小説を紐解くように著者の頭の中でつながっていく・・・。
 
何度も同じところを読み返したりして、一生懸命咀嚼しながら読んだ。
それなのに、何が理解できたのかをうまく説明できない。

「・・・私が意識を向けたものを私は認識する。そしておよそ人生とは、何に意識を向けるかでそのかなりの部分が決定していくのだ・・・」
意識することで、自分に呼び寄せていく力がはたらくってことはあるよなあ。

自分にとっての心的事実は自分にとってはまぎれもないリアルな体験で大切なものであり、これは“自分にとって”という認識があくまで必要であるっていう解釈、でいいのかなあ・・・。

ランディさんのさらなる無限の知的好奇心の先に解決の糸口は見えてくるのだろうか。
この本に続く次作が楽しみであるし、同時期に発売されている小説(フィクション)の「マアジナル」も、近々ぜひ読んでみたい。
 

ところで、この本に出てくる占星術研究家の鏡リュウジ氏。
よく年明けの占い特集などに出ている姿から想像していたイメージを大きく覆された。

すごい博識な方で、なんて頭がよいのだろう!と、もう驚嘆だった。
まさに思い込み。

ランディさん曰く「私たちは意識によって構造化されたものだけを認識し、その小さな箱庭で生きているのだ・・・」ってことだわね〜。