マアジナル

先日読んだ「アルカナシカ」に引き続き、「アルカナシカ」のフィクション版?とも言える「マアジナル」を読んでみました。


 「マアジナル」 田口ランディ著 
   株式会社角川書店
    1700円+税


これはまた、すごい作品にしあがっていました。面白い!
何より、田口ランディさんの物語の構成力が素晴らしい。

登場人物の過去が、引き寄せられるようにつながっていくストーリー展開に、ゾクゾクします。
物語の中にいろんなキーワードが散りばめられていて、登場人物によってパズルをとくようにつなげられていきます。
 
円盤(UFO)、円、ゼロ、ジョーカー、愚者、パーシヴァル・ローエル、冥王星、創造と破壊、
霊界、スウェーデンボルグ、カント、量子論、ポロベッツ人(だったん人)の踊り、
東西の融合、宗教、神、タマグス、海、生命の誕生、胎盤・・・  

登場人物たちそれぞれの過去や個性がいろんな意味をもってつながっていき、まるでタロットカードの夢の中で生きているよう・・・。

今回は「アルカナシカ」で“予習”していたので、それぞれのキーワードの意味は少しは頭に入りやすかったですが、これを最初に読む場合はちょっと立ち止まりつつ読まなければ理解が難しいかもしれないですね。
 
この本の登場人物“編集長”のセリフから、“スピリチュアル”と“オカルト”の違いを感じ知ることができました。
(本文より)
オカルティストはね、神秘を暴くことができないことを知っている。でも、せめて神秘を感じたいと願い、知ることができないと知りつつ追い続ける者たちなの。
・・・
あるかもしれない。だけど、ないかもしれない。そういうものなの。わからないの。わからないということが大事なのよ。オカルトというのは、もともとラテン語で《隠された物》って意味なの。
・・・
オカルトはね、個人の幸せとか、自己実現とはぜんぜん無関係。虚実を含めた時空間構造を解読するパズルゲームなの
・・・

まさに、この本はそんな“オカルト”な本。
“隠されたもの”があばかれそうで、好奇心と怖れが錯綜する。虚なのか実なのか。
出口がありそうでないような、そんな後味を残す本。

ちなみに「マージナル」の意味を調べてみると・・・
周辺にあるさま。境界にあるさま。また、限界にあるさま。
だそうです。

ランディさんの思いは、編集長と陽平によって語られている気がしました。
編集長も陽平も、「マージナルマン」だからかな。
いや、UFOに関係する登場人物たちはみんな、ある意味「マージナル」な位置にある存在だったのでしょうね。

なかなか読み応えのある、不思議な余韻を残す本でした。