『感動をつくれますか?』『仕事道楽 新版』

最近読んだ本について。 

どちらも「ジブリ」に関わる方の本です。

 

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『仕事道楽 新版』~鈴木敏夫~ 岩波新書
『感動をつくれますか?』~久石譲~ 角川書店

 

作曲家、久石譲さんの本。

大変な努力家ですし、自分を高めていくアスリートのような印象をもちました。

普段から知性やアンテナを磨いて自分の土壌を耕す努力を持続していくことで、ひらめきや直感をキャッチできる、ということを説いています。

映画音楽というのは、監督のイメージに合う曲、映画の世界観にマッチしたものでなくてはいけないし、かと言って無難に合うものを創っても面白みがないということで、監督にもイメージの壁を突き破ってもらうくらい、はっとさせるもので太刀打ちしないといけない、という状況での作曲活動。

自分の好き勝手な創作ではなく需要に見合うもの、という枠がある中で最大限に自分の能力を発揮させなければ成長がない、という追い込みプレッシャーは計り知れませんね。

そういった創作活動を行っていく上で、久石さんが心がけていらっしゃることが詰まった本になっていますから、どんな方にも参考になると思います。

(が、なかなか継続してできることでもありません…だからすごいことです!)

とてもストイックな面もありますが、認められずにしょげたり必死にピアノを練習したり、くすっと笑えるような面も随所に見られました。

ハウルの曲を宮崎監督に提案する際のエピソードは、とてもチャーミングです!

 

ジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さんの本。

才能あふれる、”あるがまま”の人たちと関わることの難しさや面白さ、人間関係がもたらす化学反応、がたくさん詰まった本でした。

著者の、人の特性を見抜いて実際的なものに活かしていく能力や忍耐強さは、もう猛獣使い?(笑)のようです。

宮崎監督が鈴木氏に関するコメントとして、「仕事をさせていないふりをして、仕事をさせる。あおっていないふりをして、あおっている。」ということが書かれていましたが、鈴木氏のさりげなく人を動かす能力を物語っていると思いました。 

こだわりの強い宮崎氏と高畑氏の間を行ったり来たりしているエピソードは、それぞれの人柄が伺えて面白いです。

 

さすが…!と思ったのは、宮崎駿氏の視覚的な認識力と記憶力。

宮崎監督の風景などの作画は、資料を見ることなく宮崎氏の記憶力を基に、そのまんま風?なオリジナル画が描かれているということで。

~『彼はほんとうに真剣に「見る」。なんとなく見ているんじゃないんです。感覚をフルに働かせ、それまでの知識・情報を動員して、つかんでいく。』~

監督の映画の観方も独特で、ストーリーというよりは描写の細部だとか物の造作だとかをじっくり観ているということで、人とは視点が違うよなあと感じました。

 

作曲活動や長編アニメを創っていくということは、できあがった時にどういう受け入れ方をされるかもわからず、それまでの試行錯誤の状態の方が果てしなく長くて地味なもので、まさにチリチリするような日々。

膨大な知識活動や構想の下積みと長い時間をかけた地道な取り組み、労苦のあるプロセスをそれぞれがプロフェッショナルな仕事をした上で、人々をハッと心揺るがすような作品が生まれているのですよね。

 

『仕事道楽 新版』

「こつこつ努力することで開ける未来がある~つねに現在進行形で考える~」より…

人間の生き方にも二つあると思っています。目標を持ってそれに到達すべく努力する。それは、簡単にできることではありません。僕なんかも目標がなかったから。もう一つは、目の前にあることをコツコツこなす中で、自分に向いていることを見つけていく。これが❝生きる❞ということだと思います。

その中では困難にも出会うでしょうが、困難は楽しんだ方がいい。その時のコツは、困難を❝他人事❞だと思うこと。問題を客観的に見ると解決方法が見つかることがあるんです。

 

先が見えない状況の中でも、目の前にいる人や状況に対して、今できることにコツコツと取り組んでいく、その積み重ねだなあ…と。

本を読んだ後にジブリを観返してみると、また感動します!(´-`*)