『香君(上・下)』

上橋菜穂子さんの本が好きで、今春発売された『香君(上・下)』も読みました。

さすが、引き込まれる描写力、物語の構成も素晴らしかった!

 

 

本の内容をあまり明かさずに感想を書こうとするのは難しいので、公開されているものの引用多数になってしまいますが。

カバーのそでに書かれてあることで、何となく概要はわかるかと思います。

カバーそで(上巻)

遥か昔、神郷からもたらされたという奇跡の稲、オアレ稲。

ウマール人はこの稲をもちいて帝国を作り上げた。

この奇跡の稲をもたらし、香りで万象を知るという活神〈香君〉の庇護のもと、帝国は発展を続けてきたが、あるとき、オアレ稲に虫害が発生してしまう。

時を同じくして、ひとりの少女が帝都にやってきた。

人並外れた嗅覚をもつ少女アイシャは、やがて、オアレ稲に秘められた謎と向き合っていくことになる。

 

カバーそで(下巻)

「飢えの雲、天を覆い、地は枯れ果て、人の口に入るものなし」……

かつて皇祖が口にしたというその言葉が現実のものとなり、次々と災いの連鎖が起きていくなかで、アイシャは、仲間たちとともに、必死に飢餓を回避しようとするのだが…。

オアレ稲の叫び声、それに応えて飛来するもの。

異郷から風が吹くとき、アイシャたちの運命は大きく動きはじめる。 

 

で、私はこの物語の内容に水瓶座的な雰囲気を感じたのですよね~。

『嗅覚』というのは、占星術では水瓶座の感覚です。

この本の中では、生物がもつ滲み出るメッセージをかぎ分けるような感覚としても描かれていましたが。

上巻の帯より…

無数の香りがもつ意味が、アイシャにはわかるのだ。

我が身を喰われた草木は、香りを発して、その虫の天敵を引き寄せる。

草木の香りが虫を誘い、草木によって土も変わる。

無数のものたちが行っている、そういう、眩暈がするほど複雑なやりとりが、いまこのときも、この世界では起きているのか。・・・

 

上橋さんのインタビュー記事☟…これまた素晴らしい内容です!

books.bunshun.jp

「私たち人間が命を繋いでいられる理由の中には、そういう目には見えない様々なことによって成り立っている部分があって、私はそういう見えないネットワークみたいなものに、すごく心惹かれるのです。香りも、それこそ目に見えないものですよね。香りから見えて来た世界の姿に驚き、ワクワクしたことが、この物語を描く時の大きな原動力になっていました。」

‟見えないネットワーク”というのは、まさに水瓶座的ですよね。

 

更に言えば、牡牛座・獅子座・蠍座水瓶座の不動宮の関係性も、物語の内容に当てはめられるかもなあ…と思いまして(笑)

(牡牛座)味も他の米とは比較にならないほどおいしく、生産性も高く効率よく育てることができるオアレ稲

(獅子座)そのオアレ稲をもたらした活神として「香君」や皇祖を祭り上げることで、国を統治するべく勢力を拡げる帝国

蠍座)帝国の方針に服従し、オアレ稲を栽培することで生活を守ってもらい、「香君」の存在に依存する藩王や国民

水瓶座)この3つの関係性に鋭い風穴を開けるべく現れたのが、異郷からやってきてあっという間にオアレ稲に拡がった虫害

…という感じで占星術の4サインの関係性で考えてしまえば、どこかが強くなるとか偏りが生じることで、全体に大きな影響が出てくるというお話なのかもなあ…とも思ったのでした。

 

また、上のインタビュー記事の中で…

「すべてを制御できるという人間の驕りが、制御しえない命の反乱によって覆され、森羅万象のネットワークが張り巡らされたこの世界の本当の姿に気づいていく。それは、とりもなおさず、命とは本来どういうものかという問いに繋がっている。…

この世は、常に同じものが一人勝ちし続けるようには出来てはいないような気がします。生き物は死ぬように出来ているし、植物も、あるものが枯れると、あるものが栄えたりする。多様であることにも、均一であることにも、それぞれメリット・デメリットがある。」

とあって、そうだよな~と…。

 

この本では、「虫」が命を存続させていくため変異していく描写も力強く、虫が苦手な人にはギョッとするような内容もあると思いますが。

これも人間目線であって、植物のオアレ稲にしてみれば、虫であれ人であれどちらも天敵になるわけで、どこに視点をもっていくかで横やりを入れてくるものの在り方も変わっていくよなあ…とか。

そして、「香君」という特別な存在についても、不安定な時に何か神秘的なものにすがりたい気持ちになることがあってそれは悪いことではないけれど、望む役割を果たしてくれるのが『神』だという幻想や、予言などで人々を心理的に導くことの危うさなどにも触れていたのが、考えさせられました。

まさにコロナを思わせる今の情勢にシンクロすることも多く、余韻が残る内容でしたね…。

児童図書(ファンタジー)というジャンルで、子どもはどういう風に感じるのかな?ということも気になりましたが、どちらかというと大人に読んでもらいたい本かも。

面白かったです!