漢方なからだ


 「漢方なからだ 病気と健康のしくみが見えてくる」
  宮原桂・小菅孝明 著
  農山漁村文化協会 1350円


東洋医学に関する本はこれまでも少し読んだことはあったのですが、この本は陰陽や五行の関係について、やさしくかみくだいて絵などを用いてたとえながら説明をされているので、ただ憶えるというよりは頭の中で現象を想像しながら理解することができました。

陰陽のとらえ方ですが、私は体の中の必要なものの値が1としたら1を超えているのが陽で足りないのが陰というイメージをもっていたので、どうしても陰虚という状態がよく理解できずにいました。

足りていないのが陰という状態なのに、陰が足りないってどういうこと!?って感じです。
この本を読んで、陰陽のとらえ方が間違っていたのだなということに気づくことができました。

陰陽は、実質的に物があるということを「陰」、そのものがしっかり機能することを「陽」といいます。

ロウソクの火と濡れた和紙との状態で陰陽の考え方を説明されていました。
この場合、「水(陰)」と「実態(濡れた和紙)」は陰であり、「火(陽)」と「温める機能」は陽となります。

和紙が乾燥している(実態としての陰の不足)や、ロウソクの炎が強い(機能としての陽の亢進)という状態は、人体でたとえるならば、肌のかさつきやほてりという症状であり、対処法としては「陰の補充」、「陽の制御」が必要となります。
 
逆に、和紙が過剰に濡れている(実態としての陰の過剰)や、ロウソクの炎が小さい(機能としての陽の不足)という状態では、人体でたとえるならば、冷えやむくみという症状であり、対処法は「陰の制御」や「陽の補充」ということになります。

また、陰陽のバランスをシーソーにたとえるならば、年齢に応じた陰陽の定員があります。
青年期以降はそれぞれ陰陽の定員は減っていっても、バランスとしては陰がやや勝る(安静性が増す)状態がよいそうです。

陰陽はお互いがなければ存在しませんし、常に移り変わっており相対的なものであって、バランスよく存在しているということが、自然の秩序を保ったり健康であるために大切なんですね。

 
あと、漢方の基礎理論「天人相応(てんじんそうおう)」という言葉の解釈も素晴らしいと思いました。

「人体(小宇宙)は大自然(大宇宙)と同じであり、逆に大自然(大宇宙)は人体(小宇宙)と同じである」

人体にも「気」という風が吹いて、「血」や「津液」という水が流れ、川は「血脈」となり、道は「経絡」となるという考え方で、NHKの「驚異の小宇宙 人体」ではないですが、なんだか映像のイメージが思い浮かびますよね。


五行の考え方についてもピラミッドにたとえて説明されていて、「心」という“本丸”を守るために、「肝」が外部からの影響をカバーし、「腎」が身体の柱(生命の根源の仕事)として、「肝」「腎」が土台となってしっかり支え(肝腎かなめ)、さらに「肺」「脾」とも連鎖しながら、陰である「腎」が上昇、陽である「心」が下降する「心腎相交」で、ピラミッドである人体のバランスを保とうと五行がそれぞれ機能しているのだなという概要が、よく理解できました。
 (詳しい連鎖機能の理解については、本を何度も読まないと自分のものにはできませんけど・・・)

漢方の基本のとらえ方がわかりやすく書かれてある、良書だと思います。
この本、図書館で借りたのですがとても気に入りました〜。