「天命の暗号」


 「天命の暗号」
  〜あなたの天命は今日までの人生に秘されている〜
     出口光著(哲学博士) 中経出版

  

この本はなかなか面白かったです。
何が素晴らしいかというと、内容の構成がよいといいますか、本筋の進め具合にプレゼン力があるといいますか・・・。

どうつながっていくのか期待させるようなステップアップして考えさせていく質問と解説を提示していくことで、読者を引き込ませていく力強さがあり、また一つひとつの質問をこれまでの自分の言動に照らし合わせて考えてみることで、自分のこととしてなるほどね〜と納得させられるといった感じです。
 
著者曰く「天命」というのは、自分がいやだいやだと嘆きながらも続けてきている言動であり、過去の人生の中で一貫して流れる経糸がいったい何かを振り返り、それを動詞で表現してみることで明確になるということです。自分自身の言動の“くせ”みたいなものと言えるかな?

そして、著者が見つけ出した4つの傾聴の性質から人生の求めるものや他人とのかかわり方の傾向がつかめ、それを活かす生き方をするこが大切であると言っています。

つまり、過去の人生で一貫した経糸は未来への延長線上にもあると認識することで、その経糸を表現した動詞をさらに高次へと成長・発展させていくことが「天命」に志すことにつながるということのようです。

「天命」は、環境によって左右されやすい不安定な心の奥底に秘された不動の「魂」にあるということであり、それは過去の自分の言動を振り返ってみた時に自ずと見えてくることですので、これが「天命」かしらと気づけば自分でその「天命」を活かす生活を心がけてみようという気分にさせてくれる内容となっていて(と思う)、この本はセルフカウンセリングの本として素晴らしい1冊であると思います。

ただ、その「天命」は嘆きの中にあるということもあり、「天命」を見つけたからといっても結局は今までの人生の延長にあるのであって、必ずしもガラッと変化して成功をつかめるといった夢のような人生が送れるというわけにはいかないという気はしますけど・・・。
 
過去の自分への肯定感や、自分の個性に気付いて活かして伸ばすという効力はあるのかなと思いますがね。

あと、自分の過去からの言動の傾向を1つの動詞として表すのですが、この本に掲載されていた動詞の例は人とのかかわりに関するものが多かったので、人とのかかわりに関する動詞を1つ、自分の性格とか根ざすもの?を1つと、2〜3の動詞を見つけて組み合わせて自分の適性を考えてみるといいのかなあと思いました。

この「天命」の考え方でいいなあと思ったのは、天職のとらえ方です。

天職は、「特定の職業は特定の特性を持つ人に向いている」というとらえ方をされがちですが、同じ職種であっても自分の「天命」を仕事にどう表現し活かしていくかが大切であるという考え方です。

つまり「天命」を自分の仕事に表現できれば、それは天職となりうるという考えです。
この本は、就活している学生さんとか転職を考えている方にぜひお勧めしたいですね。