『逆さに吊るされた男』

先日、図書館で読んだ本。
田口ランディさんの「逆さに吊るされた男」。
2時間ぐらいで一気に読み上げました。
私小説」ということですが、リアリティのある渾身の一作、圧倒的な読み応えで本の世界に引き込まれましたね〜。
 
手元に本がないもので、内容の紹介について『amazon』から抜粋させていただきますと…

―― オウム真理教とは何だったのか、私だけが、真実に辿りつけるはず ――
地下鉄サリン事件の実行犯で確定死刑囚Yの望みで、外部交流者となった作家・羽鳥よう子。
贖罪の日々を送るYと、拘置所での面会や手紙のやりとりを重ねるうち、羽鳥はこんなに穏やかそうなYが
《なぜ、殺人マシンとまで呼ばれるほどの罪を犯したのか》という疑問を抱く。
《警察も、マスコミも、世間も、間違った解釈でオウム真理教事件を過去のものにしてしまった。Yとの出会いは運命。私だけが、事件の真実に辿りつけるはず――》
関係者に会い、教義を学ぶうち、そう確信した羽鳥は、ついにYとの交流をもとに『逆さに吊るされた男』と題した小説を書きだし、独自のオウム解釈にのめり込むのだったが…。

グーパーじゃんけんで、常にグーを出す男。
優しくて弱い者の味方で正義感や反骨精神が強い故に、いつのまにやらドタバタと警察に捕まってしまっているチャップリンのような男。
Yの印象を、そう語る主人公よう子(ランディ)。

まともなヨーガの研究団体だったオウムは、次第に“クンダリニー覚醒”(チャクラを解放する神秘体験)による修行が主となり、それが麻原絶対の宗教思想に成り変わり、教団の歯車が崩れていく。
修行による不調は“カルマ”が原因、“悪いカルマ”をもった人を転生させるための殺人までもが肯定されるような思想に誘導されていく信徒たち。
Yは、団体の方針に微妙な違和感を感じながらも、自分にも制御できない潜在的な渦にのまれて犯罪に手を染めてしまう…。

よう子は、麻原へ意識を向けて調べていくうちに、自分の中の“無意識”を突き動かされていく。
作家としての才能でもある妄想がふくらみ、シンボルに次々と意味的な繋がりをもたせていく過程は、著者の興奮が伝わってくるようでした。
 
ゴジラ」と「ナウシカ」の映画封切日の数字と浅原の誕生日、そして3.11。
3や1や2といった数字がもつ意味。富士山に眠る日本という国がもつ潜在的な意識…。
潜在的な集団意識が作りあげる、暗黙の思想や規律。
 
タロットカードⅩⅡの「逆さに吊られた男」、オーディン
オーディン北欧神話の神で、呪術を操る戦争と死の軍神。
そしてその姿は、長い髭をたくわえ片目を失っている…。

小説家として、妄想にリアリティを生み出し、伏線に繋がりをもたせていくという才能が、オウムのファンタジーの側面を導き出し、“狂い”に加速を増していきます。
宗教はファンタジー
妄想は自分の中のものだが、ファンタジーは人を巻き込んでいく力をもつのだ、と。
 

数字やシンボルの象意に意味をもたせ、繋げてこじつけながら推理していくというのが、『占い』なわけで…。
私がはまっている占いの勉強、スピリチュアル的な思考も、タガがはずれれば潜在意識に巻き込まれたファンタジーになりうるということ。

メディアでは伝わらないオウム、スピリチュアルや宗教がもつ慈愛や好奇を伴う精神世界のあやうさ、などを感じられた本でした。


松村潔さんが20年ぐらい前?に「Webマガジン幻冬舎千駄ヶ谷占星術研究所」で、ランディさんのホロスコープを読んだ記事を見つけたのですが、ランディさんの作風を示した内容で興味深かったです。
 (以下抜粋)

●10天体のうち、4つが仕事を表す第10ハウスに ・・・
 MCは“天秤座”の1.69度にあります。つまり田口さんの第10ハウスを支配する星は“天秤座”。
 このMCから引き続く第10ハウスは、その人の職業を表します。
 ここで興味深いのは、第10ハウスに“自主性の太陽”“感情の月”“攻撃心の火星”“知性の水星”という4つの天体が集合している点です。
 そもそも占星術では10ある天体を見て1人の人生を考えます。
 ということは、10天体のうち、4つが仕事のハウスにあると『人生の10分の4は仕事なのだ』という比率になってきます。
 仕事だらけの人生ですね。
 なかなか華々しくていいじゃないか、という見方もありますが、この“天秤座”に集合している天体の度数が気になります。
 そもそも“天秤座”というのは、『他者の個性を客観的に評価したり、さまざまな人の考え方に関心を抱いて、ひとりよがりでない活動をしていく』のですが、15 度近辺の半ばにあるサインは、影の作用に侵入を受けてしまうのです。
“他者の意見を公平に評価する天秤座”にとって、影のサインというのは、180度側にある“牡羊座”。
牡羊座”は、『横暴だったり、個人の思いこみが強い』ことを表しており、“天秤座”の公平さを、この“牡羊座”が揺るがしてしまうのです。
 職業のハウスにある4天体のうちの1つである“感情の月”は、『七歳くらいまでの幼少期に育成される、その人の個人的な感情パターンや人格』を示すのですが、“天秤座”の16.70度にあって、このあたりがちょうど“牡羊座”の侵入を受けた“天秤座”という位置づけにあるのです。
 この16度の意味をサビアンシンボルで読むと、『仕事を退いた船長が、港に出入りする船を見ている』というものです。
 つまり、他者との付き合いの中で“牡羊座”的横暴さに傷つけられた結果、海に乗り出さず、安全な陸地で、あれこれと何か言ってる姿ということになるのです。
 実際、陸地にあがって船に乗らない船長なんて、まったく意味をなさないのですが、これは対人関係の“天秤座”が、人と接するのがイヤだと言っていることになります。
 さらに近くには“攻撃心の火星”があり、サビアンシンボルでは『ふたりの男が逮捕される』と読むことができます。
“天秤座”の客観的で公平に接するというルールを破るような、横暴な“牡羊座”の侵入によって、“天秤座”は傷つき、なんとか修復しようとして努力します。
 陸地にあがった船長も、あらためて海の航行に挑戦するのです。
 調和を乱すような暴走的な人との関わりでも、十分に対応できる“天秤座”になるために、こうした調和を乱す意志との融和を試みようとします。
 一般的なルールに従わない、アンチな活動をしてしまう人。反乱者。
 集団の裏切り者。地下活動などなど、勝てば正義だけど、負けると、それはただの賊といった浮かばれない意志と、とりあえず一緒につきあってみることが『ふたりの男が逮捕される』という意味なのです。
 こういう度数を持っている以上、田口さんは、人に関心を持つときにも、公には認められないマイナーな人とか、集団の行動に対して異を唱えるようなタイプの人、異物的な人、くすぶってちょっとおかしくなってる人に、どこか肩入れしてしまう傾向を持つことになるはずです。
 しかし、そういう連中に肩入れすると、田口さんもお仲間だと見なされる。そして「ふたりの男」で分かるように、一緒に逮捕されるのです。
 かなりものわかりの悪い人のために念を押しますが、これは象徴的な意味ですよ。いつか逮捕されるの? という意味ではありません。
 個人的には、広大な海のような形のない精神世界を扱う。
 職業的にも、ちょっとやばいものを含んだ題材を扱う。
 そして、それらの裁定者となる。・・・

私の天体は、ランディさんの天秤座の天体とタイトなアスペクトをもつせいか、ランディさんの本は好きで結構読んでおります。
(ほぼ図書館で読んでて著書は購入してないのですけど…すみません 笑)