「スピリチュアルにハマる人、ハマらない人」
香山リカ 幻冬舎新書 720円+税
(内容)
今、スピリチュアルがなぜうけているのか・・・。
現代のスピリチュアルは「魂」「霊」「前世」などを取り上げているとはいえ、おどろおどろしさやいかがわしさはうかがい知れず、どれもやさしく前向きで明るくハッピー志向である。
それを、おしゃれな女性、人気女性作家、大学の先生、独特の存在感やカリスマ性をもった人たちが肯定し、やさしく語りかけてくれる言葉に癒される。
スピリチュアルって、一見、哲学的な思想のようでいて、実は「“私”がより幸せになりますように」「本当の幸福を得るためにはどうすればいいのか」といった、圧倒的な自分中心主義・「現世」中心主義が根底に流れている。
それだけ現代人は脆弱で、受け入れられ認められることに飢えている。
じゃあ既存の宗教との違いはなんなのか、なぜこのようなブームを巻き起こすまでもないのかというと、その最大の理由は宗教は自分だけを救うものではないから。
「あくまで私」にこだわるスピリチュアルは、宗教的な装いをしているものの実は宗教からもっとも遠いものなのでは?
結局大事なのは自分だけ、楽しくお手軽でミラクルマジカルなものが受け入れられる風潮、利己主義、現世主義に打つ手はなしってことなのか?・・・。
ってな内容です。
スピリチュアルを代表する江原さんや佳川奈未氏、アカデミズムにおけるスピリチュアル研究などについても言及していて、別にハマるからダメっていう批判をしているわけでもなく、こういうことが言えるんじゃない?っていう提言な感じの構成なのが精神科のお医者さんらしいかも。
香山さんは、読者に揺さぶりをかけて、「自分はこう思いますけどあなたは?ちょっと待って。考えてみません?」っていう機会を与えたかったんじゃないのかな〜って思う。
多分、タイトルを見てこの本を手にする人は少なくともスピリチュアルに興味をもってる人だと思うから。
視点としては、なるほどそうだよな〜って思うところもたくさんあって面白かった。
確かに「あくまで私」より「自分より他人」の方が崇高だしそんな風に悟れればいいんだけど。
まあでも自分のことを肯定できるようになれれば、他の人たちや社会の幸せにも目が向くようになっていく“気づきや余裕”が生まれてくるんじゃないのかな、とも思うんだな。
なので、自分が興味をもてたスピリチュアル(ひとくくりにはできないでしょうけど)を通して、まずは自分自身を立て直す作業っていうのは、現代人にとっては大切というか今の時代に求められているんだろうな。
ということで。
邪念の多い私もスピリチュアルにちょっぴりハマってしまうわけです・・・。
まあ、何事もハマりすぎて生活が脅かされるような、周りが見えなくなって身をほろぼすような、本末転倒な結果になってしまわないようにすることが大事ですよね。
オセロの中島さん、大丈夫かな・・・。