密教的生活のすすめ

 「密教的生活のすすめ」 正木昇
     幻冬舎新書 720円+税




(内容)
密教大乗仏教の後継であり、インド仏教が衰退を迎えた時代に民衆が受け入れやすいニュータイプ?の仏教として登場したもの。 

それまでの仏教は悟りを開くのに膨大な時間と努力は不可欠とみなしてきた(三劫成仏)のに対し、密教密教の秘法(実際の修行は難行苦行)をもってすれば、生きているちうちに悟れる(即身成仏)と主張した。

密教はその発展段階によって、初期・中期・後期の3段階に分けられる。

初期はいわゆる呪術宗教の段階で現世利益の獲得が中心のもの。
中期は、強靭な心身の育成・修行を通し、悟りをめざすためには実践こそすべてという思想で、日本密教は中期密教が中核となっている。
後期密教も悟りをめざす点では中期密教とは変わらないのだが、その実践方法として性的ヨーガを導入し、チベット仏教の中核は後期密教が占めているらしい(14世紀以降のチベット密教では性的ヨーガの実践はほどんど行われなくなった)。

マチュアでも取り入れられる簡略化した密教的瞑想法や、曼荼羅の説明、マンダラ塗り絵の心理療法や、空海の生涯などについても言及している。
密教ってなんぞや?っていうあらましが、読みやすく書かれていると思います。

興味深かったのは、ユーミンの「やさしさに包まれたなら」の歌の歌詞で
やさしさに包まれたなら きっと 目にうつる全てのことは メッセージ 〜♪」
という詩が、空海の訴えようとした主張を端的かつ簡潔に表現しているというくだりである。
「目にうつる全てのことは(究極のホトケにほかならない大日如来からの)メッセージ」というニュアンスらしいけど、著者がよくこの歌を聴いて歌詞にピンとひらめいて、空海の言葉に結びつけたもんだな〜と感心してしまった。

あと、著者はマンダラ塗り絵を普及している(不登校や引きこもり問題への取り組みもしているようだ)ということで、その色づかいや塗り方、できあがりからその人の心理状態が表現されたり癒し療法に効果があるということは大変興味深かった。
密教的瞑想法(簡略化したもの)については、レイキなどのエネルギーヒーリング的なものに少し似ている(密教に通じているのかな?)といった印象を受けた。

今日は週1のヨガ教室の日。
先生のサンスクリット語の歌を聴きながら腹式呼吸をして瞑想風を装っただけでも、頭の芯がビリっとするような、ちょっと別の世界にいざなわれるような気分を味わえる。

1人で家で瞑想を試みても雑念だらけでこんな気分は味わえないから、やっぱりイメージしやすい状況・集中力がないとダメだわ〜。
そういう意味では、スポーツ選手や勝負の世界の人がやっているイメージトレーニングっていうのも、ある意味“悟り”ともいえるのかもしれないなあ。